私の会社はプロジェクションマッピングを事業の一環でやってる。といってもウン千万円をかけた壮大なものではなく、こじんまりと、だけど現在ある業種の需要の置き換えをしようと、そうなればいいなぁと思ってやっております。

 私は根っこはデザインとかイラストレーションや動画制作などにステ振りをしてたから、現場で設営してどうのこうのとはまるで無縁の世界にいて、そういう人間が起業していきなりプロジェクションやってみて、感じた雑感。

 プロジェクションを生業にしてる企業さんから見たらヒヨコみたいなもんですがそこはご愛嬌ということで。

 あえていろんなことをボカして書いてるので所々何言ってんだかわからないとは思いますが私だけわかればいいじゃないかな。


■見知らぬ、現場

 今まで内製現場で技術シコシコ磨いてたもんだから、現場感というのが分からない。バミっておいてとか墨出ししろとか意味わからない。なんだすみだしって。スプラトゥーンか。

 見知らぬ現場において、わたしはポンコツ以下の使えないマンであり、ここでは呼吸の使い方から学ばなければならぬと、早速もう辛い感じ。


■瞬間、ムービーデータ、重ならない

 前日まで完璧に仕上げた動画データ。現場シミュレーションを徹底してマッピングのテストも行った。

 そして現場当日、動画データが対象物に、重ならない。

 高さ、距離、想定通りの数値なのに、映像がまったく重ならない。重ならないどころかプロジェクターの光が想定位置までそもそも届いていない。

 過ぎる時間。一向に解決しない問題。真っ白になる頭。担当営業マンの静かな怒り。お世話になっている社長さんが青ざめていく。ヤバイ死ぬ。これは死んだ。人は死んだと思った時、まだ死んでいない。いやそろそろ死んだ。くそ、自分の人生いつもこんなんだ、死ぬしかない。

 泣きつくように技術に強い方に助言を電話で聞いてみたら「それ多分設置対象の角度がズレてんじゃない?」と。いやズレてない、設置対象はしっかりと想定通り。「じゃあプロジェクター設置する台がズレてんじゃないの」

 あ。なるほど。

 解決。

 完。

 死ぬかと思った。そしてこんな初歩的な事に気づけ無いことが恥ずかしくてまた死ぬかと思った。


■鳴らない、電話

 まぁ実績ゼロだから鳴るわけないよね、そうだよね。電話は鳴りません。私にあるのはいろいろな人がつないでくれたコネだけです。綱渡り。そろそろ鳴っていいと思う。営業してないから仕方ないね。

 あ、商工会議所からはメールがきた。個人電話には不動産投資の電話がよく来るように鳴った「ア、ドウモー○○サマノオデンワデスカー ○○サマモ△△(地域名)ハモチロンゴゾンジダトオモイマスケドモー!」


■(プロジェクターが)静止した闇の中で

 あるプレゼン当日、お客さんのところに行く直前まで、お世話になってる社長さんと一緒に打ち合わせをした。

 よし、これならいけるね、という判断だった。

 しかし持ち込んだ先のプレゼン現場で、なんとHDMIケーブルが寿命を向かえた。プレゼン資料が投影できなくなった。血の気が引いた。

 もうね、虚無ですね虚無。やっぱり私はそろそろ死ぬしかないのだろう。なんでこんな失敗ばかりなのか。

 一応予備で作っておいた動画で対処したけど、プレゼンは惨敗。だけど次に見せる機会をもらってどうにかこうにかうまくいきましたとさ。死ぬかと思った。


■終わる世界

 ケーブル断線より酷いのが、まぁありがちだけど作業データロスト。プロジェクションは映像作業なのでとにかくPCの負荷がデカイ。普段はある程度バックアップ心がけるようにしているけど、やっぱり、ほら、明日完成品納品って時に、ね。


■まごころは特に無い

 上記のようなトラブルがあったところで、お客さん的には当然関係ないことだし、こっちがプロジェクション一年生だとか慣れてないとかもつくづくどうでもいいし。その私の出来なさっぷりに対してのまごころなどは特に無い。ダメなものはダメである。


■商売について改めて考えるように

 これらは全部起業してから今までの失敗談で、自分への供養みたいなもんで書いたのですが。ここらで起業してみてから色々としっかり腑に落ちてきた商売の考え方みたいなのを。

 まず起業一年目でかつプロジェクションなんてロクにやってこなかった自分がどうにか業務の一部として取り組めたのは、技術力ではなくて人の縁に由来するものであり。お世話になりまくっている人との出会いにより信じられないほどのバフを得られていることになっている。

 まず商売は運な気がする。私よりもゴマンと上手い映像作家が居るし、プロジェクションなんてインタラクティブにこだわらなければ映像表現者なら誰でも参入出来ると思われる。しかし仕事に繋がるところまで行くとハードルの高さを感じた。

 私はたまたま縁からある会社の社長さんと出会い、プロジェクションをはじめ割りと先端技術に興味がありつつもその会社が走らせているラインを技術の導入によってブーストかけられるかもしれない、というところからお手伝いをさせてもらえる立場になった。


■新しい技術導入をしてもらえない悔しさと自分の自惚れ

 そうして色んな現場にくっついて回っているうちに、私は新しいものバカだから、新しくて楽しければ現場とかも導入してくれるだろう、私が面白いと思うんだからきっと他社も興味持ってくれるだろう、とか思って提案してみた。でもことごとくダメだった。

 なんでプロジェクションが(今の所)うまくいったのかと考えると、プロジェクション導入以前にその業種に当たり前にあった慣習や予算や、そういったものが下地にあって、それを「プロジェクションを導入するとより効果的であったり、ローコストに」などの代替えが出来ます、という提案が軸にあったから。そしてその背景を教えてくれるお世話になってる社長さんが居てくれたので。

 文化を知らず文化に敬意を払わず、ただ新しくて便利だから導入出来る・してもらえる、と思ってた自分はとても考えが浅かった。敬意なき変革は大きな反発を生むだけである。そんなことはリーダーシップ論でとっくに語られていたはずだったのに。


■ほとんどの人は別に劇的な変化なんて求めていない

 そもそも自分も会社運営してようやくわかった肌感覚として、金なんて少しでもかけなくていいところにはかけないで、払いたい人や投資したい対象にお金を使う。

 新しいものを導入するって、便利そうだとか楽しそうだとかそんな浅いところで決定なんて下せるものじゃなく、今あるものの延長にあるものか、急激な変化ではないか、それを取り入れようとするスタッフが皆使いこなせそうか、そういうのを吟味して、それでもお金を払うべきだと思ったらお金を払う。

 私みたいに「とりあえずやる」なんて人間はむしろちょっとおかしい側の人間であり、世の中の大きなバランスとしては、新しいものに対しては「学習コスト」とか「かえって手間にならないか」とかやっぱり否定的に見がち。

 そういう人たちの意識に対して、心のケアだったり数値的なケアだったりあるいは体験させてみたりして、そうやってようやく新しいものに興味を示してもらう。


■やっと自分に未熟さに向き合う

 ダラダラ書いたけど私はとにかくそうした「面白いよ!オススメ!」という、言葉的には語弊あるかもしれないけども子供じみた、相手のことを考えない提案ばかりしてきていて、そりゃそんな人間が勧めるものなんて、よほどの実証が無いと取り入れられることはないだろう。

 というかそもそも世の中が皆「この技術は素晴らしい売上効果があるぞ!」と認識しているならそれはもうその技術のクオリティも既に著しく発展していて、既にスタートアップや技術の弱い企業が入り込む余地など無いという状態だろう。

 スタート間もない自分が、技術も拙い自分が、それでもお客さんが「導入したいな」と思ってくれるには、とにかくお客さんの文化的背景、お客さんが今抱えている問題悩み、展望、夢、好きなこと嫌いなこと、社訓社是、そういったあらゆる「相手の事」を配慮して、その上で、だからこそ御社にはこれがオススメだと思うんですよ、というのを提案できて、それでようやく私は内製シコシコ人間から少しだけ社会性のある一般企業を作っていけるのだろうか、とかそういうことを自分に向かい合いながらあーでもないこーでもないと考えるのでした。

 というわけでプロジェクションはあまり本質ではないのですが、私は30過ぎてまたゼロから異業種でビジネスとは何かというのを学び始めて、とても刺激的な日々を送っている次第です。毎日が胃痛!

1万円起業 文庫版
クリス・ギレボー
飛鳥新社
2015-04-25