私がそもそも起業したのは「前々から起業しよう」とは思っていて、たまたま努めていた会社が事業停止という自体に陥ったから。そして丁度よく、事業の軸になりそうな仕事のラインが出来ていたから。起業するタイミングが「今しかない」という状態だったから。


■自分だけのタイミングではない

 「起業しようと思っています」

 こんなことを言う人間は私含め結構知っている。だけど「しようと思っている」なんて人間は「今」は絶対にしない。それは本人が内心「今じゃない」と思って行動しているから。だからそういう人は「今」は起業しない。でも「いつか」起業する可能性はある。

 心の準備だけは出来ているけど、その人にとっての「今」がやってきていない状態。

 私も勘違いしていたんだけど、やるやる言ってて何もしない人は、単にサボってるだけとか口だけの人間、というわけではない。その人にとってエネルギーがいるものだと思っている事柄は、それなりに自分以外のエネルギー、タイミングが必要なのだ。

 私にとってそれは人との出会いであり、当時に会社の状況であり、だった。私にとっての起業の壁は厚かった。重い腰を上げるにはそれなりの外的な理由が欲しかった。


■状況が揃う。揃えられる。

 起業しようとしている人間の周囲には状況が揃う。と、思ってた。状況は揃うし、勝手に揃えられることもある。私は起業しようと思っているだけは思っていたので、この状況に乗ってしまえた。乗らされたとも言える。

 だけど周囲の話を聞くと、本当に心の底から起業なんて考えてなかったけど、状況的には「起業することが一番の道」だから、起業したという話も聞く。

 しようと思っているとか、準備が出来ているかとか、そういうのは全然関係ない。周囲が勝手に状況を作っている。もちろんそうなるような状況を作ったのは普段の自分の行いや気質であることも否めない。

 状況というのは周りが勝手に作っていく。自分から作ることも可能だけど、自分だけのタイミングではない。そんなことを改めて感じるのです。


■世の中って、思った以上にタイミングだ

 私は前職でコンテンツを発信する立場だったから、本当に身にしみているのだけど。世の中というのはタイミングで出来上がっている。何をやってもダメな時というのは、世の中の流れに反したことを自分が何かやっていたり、そもそも頑張る場所を間違っていたりだったりする。

 でも、その時間違いだったものが、世の中の流れとしてタイミングとして正解になってしまったりする。本当に、不思議な事に。

 不思議と、何をやってもうまくいく人が居る。その人の要領の良さとか実力とかでは説明のつかないレベルに。でもよく観察していると、しっかりとタイミングが合っている。理にかなっている。直感的であれ、計算づくであれ、本人も分かってやっている。

 世の中って思ったよりもタイミングで出来上がっている。


■自分の道もタイミング

 出世するのも、転職するのも、失業するのも、起業するのも、世の中のタイミング。自分自身ではそんなに制御出来ているようで実は出来ていない。周囲や景気や人との出会い、これらに自分のタイミングは揺り動かされている。

 あまりタイミングに抗わない方が良いんだと最近は思う。正しくは、どうしても抗わなければならないときだけ、抗うという感じ。

 例えば小舟で川の流れに乗ったとして、でも岩にぶつかりそうならそのときばかりはオールを全力で漕ぐ。でもいつもオールをマックスで漕いでたら疲れるし、川の流れに逆らった所で単に進行が遅くなるだけ。

 というわけなので思った以上に自分の都合通りにならないと思ってる人は、タイミングの制御というのが思いの外難しいのだと思っていると「あ、今はタイミングじゃないんだな」と割り切ることが出来る。

 起業の話に戻って。その時の自分が得ている知識、周囲が得ている知識、集まっている人、世の中の動き、それらによって自分の会社の動きは決まるのだろう。うまくいくか潰れるのかも含めて。

 でも出来れば、周囲の、世の中のタイミングに軸のあった企業活動を続けられればと、そう思うのでした。自分のタイミングではない。

諸行無常を生きる _ _ (角川oneテーマ21)
ひろ さちや
角川書店(角川グループパブリッシング)
2011-10-10