20170507

出典:Amazon きっと、うまくいく


 2010年ボリウッドのフィルムフェア賞(インド映画のアカデミー賞)を受賞したインド映画「きっと、うまくいく」。久々の休日に何か映画のひとつでも見てみようかと思い、AmazonPrimeを眺めていたところ偶然にこの映画にたどり着きました。

 いやぁ面白かった。本当に元気になれたた。GWも終わるし、明日を良い気分で望むためにはぴったりな映画だと思いご紹介。

 インド映画マニアでも映画オタクでもないので、私の感性なりに感じたことをつらつらと書き記します。



■おおまかなあらすじ

 生まれた瞬間に自分の将来をエンジニアとして決められた「ファルハーン」最底辺の家庭から家族の一身の期待を背負い進学した苦学生の「ラジュー」。二人は名門大学で運命の友人「ランチョー」と出会います。彼は奇人か天才か。苛烈な成績競争の大学生活、それが当たり前である状況にランチョーは常に疑問を投げかけます。口を開けば教師の問答に想定外な解答。学長の難題もものともしない。と思えば友のために泣き、笑い、自分のことなど顧みずに行動してしまう。

 ファルハーンとラジューは親に縛り付けられた人生を、ランチョーとの出会いによって大きく変化させていきます。

 …そんなランチョーは大学卒業を最後に、2人の前から姿を消します。物語は大学生活と、そこから10年後を舞台にランチョーを探す旅、過去と現在が交錯しながら進んでいきます。

 笑って泣ける170分間。スピルバーグが絶賛し、ブラッド・ピットも唸った本作。人生で一度は見ておきたい一本だと思います。


■インドの若者の自殺問題

 少しだけインドの事情を知っておくとより本作は楽しめるようになっているようです。映画自体は既に7年以上前のものですが、この当時インドでは学生の自殺が社会問題になっていたのだとか。

 それは過剰な成績の競争に次ぐ競争。日本では若者の人口減少と共に話題にならなくなってきましたが、若者の人口と経済発展が著しいインドでは苛烈な競争が起こっていたのだとか。現在はどうなんでしょうね。

 この映画、自殺や自殺未遂が映画の需要なカタルシスで用いられます。ネタバレになるので極力伏せた表現になりますが、この落差が本当に見事で、心臓を捕まれるような気分を味わえます。


■親に道を決められ、親の期待を背負う若者たち

 ファルラーン、ラジューは共に親に自分の将来を大きく縛り付けられています。自由すぎるランチョーに憧れ、影響されながらも、どうしても親の顔が浮かんで決断が出来ない。インド社会の「親」の強さ、圧迫が二人を追い詰めていきます。彼らの人生には親がセットで存在しているし、それが当たり前なのです。

 今の日本に住む私達からすると異常な様相であり、それが異常であるということを代弁するかのようにランチョーは二人の家族の心をも変えていきます。


■成績のために学ぶではなく

 人は本来学ぶために大学へ行くはずなのに、いつの間にか良い成績を収め就職するために大学へ行くようになっている。学ぶのではなく、いかに教科書の通りに記憶するのか、これが学問であると。マシンを作り出す大学。皆、自分の頭を圧迫させるために勉強している。

 映画ではその滑稽さを演出交えて描かれており、この既成概念を主人公のランチョーがぶち壊していく姿が非常に爽快です。ランチョーすごいぞ。


■結果は後からついてくる

 学長からの低評価でラジューが「成績が良くなって良い会社に行かなければ家族を養っていけない」と嘆きますが、ランチョーは「成績のために学ぶのはおかしい、楽しんで学んでいけば結果は後からついてくる」と言います。ラージュは「それは理想論だ 理想や夢で家族は食べていけない」と一蹴してしまいます。

 最底辺な世帯で暮らしてきたラジューは、悠長なことを言ってる場合ではないわけです。この辺は何気なく描かれるのですが、辛いシーンだなぁと思ってしまいした。

 結果的にラジューはランチョーとの4年間、加えて自身に起こる重大な事件により、ただ目の前の事ばかりを見て怯えている自分に気づき、広い視野から学問を自分を見つめる事が出来るようになりました。

 私も自分の人生に重ねてしまい、ラジューの変化は特にグっときてしまいました。本当、結果って後からついてくるんですけど、追い詰められるほど先に結果が欲しくなっていくんですよね…。


■人生は All is well

 この映画の一番のテーマは「All is well(うまくいく)」。主人公ランチョーが、不安や心配が襲ってきた時はこの言葉を唱えるんだ、と言います。

 要するにハッタリをかませ、と言ってるのです。

 暗い気持ち、自分がうまくいかないイメージというのは、必ず自分にとって良くない結果をもたらす。皆、恐れや不安で自分を知らず追い詰めている。自分に負けている。だから、「きっとうまーくいく」って自分に思い込ませてやる。

 なんせ映画自体が長いから語りたいことは山ほどあるのですが本作のこのAll is wellの考え方は、連休明けの自分を奮いたたせるにはピッタリかなと思いました。

 他にもインド映画でおなじみダンスシーンや笑えるコメディーなシーンなど盛りだくさんですが、それは映画を見てのお楽しみということで。170分と長尺ながら中間で休憩をお知らせしてくれる演出などもかゆいところに手が届きます(笑)

 というわけで元気になりたいなーと思ったら是非この映画を。