20160912


 トラウマは人間、規模の大小あれど経験しているものと思います。何かを見たり特定の音を聞いて条件反射的にビビってしまう状態。重度になってくると、それは自己暗示のように自分の人生に対して大きな枷を与えるようになってきます。トラウマつらい。つらいから、なんとか治せないものかと試行錯誤してきた備忘録。




■トラウマ壮絶につらい

 私の育ての親は、自分が気に入らないことがあると怒りを震わせ、誰かを殴ったり…はしなくて。でも代わりに家のモノにとにかく当たる人でした。ドアを蹴飛ばし、食器棚を破壊し、怒鳴り散らし。私は子供の頃、それが起こる度に身を震わせて部屋に隠れて我慢していました。

ここで植え付けられた私のトラウマは、「大きな物音や怒鳴り声を聞くと、身体が硬直して動悸が激しくなり、頭に強い圧迫感が与えられること」またそれに付随して、そうした事態に出くわすのが嫌だからとにかく人を怒らせないよう、特にそうした雰囲気になりそうになった時は極力喋らず細心の注意を払うようになったこと。


もう一つのトラウマとしては、私は緊張したり恥ずかしくなると直ぐに顔が赤くなってしまうこと。そのせいで、子供の頃人前に立つ度にからかわれ続け、恥をかかされてきましたし侮辱もされてきました。というわけで私は「人前で緊張する事柄に対して異様に恐怖心を覚える」というようなトラウマを獲得しました。だから目立つことをするのがとにかく嫌になり、人をとにかく避けるように。


■トラウマのせいで人生がうまくいかない

 人とぶつかってその人の怒りを誘発するものトラウマのせいで嫌だし、その時に興奮したり緊張して赤面して恥ずかしい思いをするトラウマが発症するのも嫌だし。そうして、少しでもその兆候があると私の心は酷く萎縮し、頭はパニック状態に。私はトラウマに苦しめられていました。

やがて、逃げる。嫌だ嫌だ嫌だと逃げた先でどんどん心が引きこもっていきまっした。最終的には「トラウマのせいで何も出来ない、こんな自分が存在している意味が無い」みたいなところまで。

全部このトラウマが悪く、それを与えた過去が悪く、何もかもが上手くいかない自分の人生が嫌で、そんな何か嫌なことにしかすがれない自分が嫌いで、はぁダメですよホント、トラウマはダメです。なんとかせねば。


■トラウマなんてそもそも存在しない?

 昨年ベストセラーになった「嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え 」の元になったアドラー心理学。この中で、アドラーは「人は過去に縛られない」とし、トラウマを否定しています。

嫌われる勇気で評判になる前から、こうした「そもそもトラウマなんて無いんだよ」という系の話は何度も聞いたことはありました。

で、そんなことを聞いた私は。もうあれですよね、激しい憤りですよね。自分がこんなに過去に苦しめられて今の生活に酷い影響を与えているというのに、「そんなもの存在しない」なんていうのですから。

アドラー、こいつはダメだ、何もわかっちゃいない。人の苦しみの根本までを理解してなんていない。と。(今は理解してますが、当時はホントに分からなかった)


■トラウマを理由にした厳しい自分ルールが見えてきた

 そんな感じで他に本を読んだり、人に会ったり、普通に生活したりしている中で段々とこのトラウマの心苦しさのもっと根本に向き合うようにしていくことになりました。どうやったら治るんだよ…苦しい日々。

そんな中で 7つの習慣 を読んだあたりでふと気づいたことが。「あれ、これ自分にだけ厳しい自分ルール課してない?」と。

つまり「赤面症怖い→恥をかくの怖い→人前に出るの怖い→世間の目が怖い→自分は人前とか出る資格無い」
もうひとつ「人が怒るのが怖い、大きな音とか怖い→人と接するのが怖い→こんな自分は人と接する資格は無い」

こんな感じで、トラウマに紐付けて「自分は◯◯なんて出来ない。何故ならトラウマがあるから」という、理屈が組み上がっていて、その理屈が、やがて自分にとってのルールになってしまい。私はそのルールにがんじがらめになってしまっていました。

正直極まってしまった瞬間は「何もしないほうが世の中のため」とか「生きてる価値無い」とかそこまで逝ってました。誤字ではなく逝ってました。


■自分ルール憎い憎い

 こんな自分を縛るルールが憎い。自分に枷をかけて自分を貶めて、何もしようとせずに自分の中に自分を押し込めて、何も出来ないことを全部トラウマのせいにして、何もしなかった自分が憎い。

自分ルールを信じ続けた自分が憎い。


■自分ルールの書き出しをする

・自分は人前に出ると赤面するから、人前に出るようなことはしないほうが良い
・自分は怒鳴り声を上げられると、萎縮するから、極力人の顔色を伺うべき
・自分程度の人間が◯◯の場所に行くべきではない
・自分のような人間は△△なんてやっちゃいけない
・自分のようなつまらない人間がブログなんてやっちゃいけない

こんな感じで、自分が自分に対して与えている枷を見える化していきました。


■形に起こして、意識するように

 紙に書き起こしたからといって、すぐに問題が解決するわけでは当然ありません。が、これをやって以降は、いざ何か萎縮した時とかダメな波が来た時に「あ、これは前に書いてた◯◯の項目のルールが来てるな」と感じる事、客観視出来るようになってきました。

自分がよく分からないトラウマから生じる重苦しい「何か」に支配されるのではなく、「自分が知ってる何かが悪さをしている」と感じられることで、少しずつ自分にとっての疑問を紐解いていったのでした。

そして、そのルールが現れた時に「それは守る必要あるか?」「それは自分だけが思ってることか?世の中の人がみんな思ってることか?」など、ルールについて噛み付いて、歯向かって、自分を締め付けるルールを倒していったのでした。

「倒していった」という表現を用いるのは、まだ強力すぎて倒せないのも居るので。


■トラウマを治すことを、諦める

 自分ルールを生み出すコア。トラウマ。これとは向き合うことにしました。怒鳴られて大きな物音で威嚇されるとビビる。これについては「まぁそういう性分なんだから仕方ないだろう」と、諦める。治そうとしない。代わりに、それに何か「自分の出来ない」を紐付けない。赤面症についても同じく。たとえそれで人に侮蔑されても、それは他人が感じた印象であり、別に治るものでもないんだから、隠そうとしたり必死に平静を装うこともしない。

そうやって「自分はまぁ、残念なことにこういう過去を経験してきちゃったのだけど、過去は変えられないし仕方ないか」と諦めることにしました。

諦めたら、徐々にトラウマのことを意識することがなくなってきました。

今になって、少し分かったことは。

自分がトラウマに必死にしがみついていたこと。トラウマを自分の軸にしていたこと。トラウマを理由に出来ない自分を作り上げて、その自分にすがっていたこと。出来ない自分を作り上げて、誰かに助けてもらうことを待っていたこと。

トラウマを治すことを諦めたことで意識することを辞めることで、私は皮肉にもトラウマから少しずつ開放されることになっていったのでした。


■現在は残党狩りと、現実のルールとの戦い

 そんなこんなで、トラウマはある程度意識することも無くなったわけですが。先述した通り、強力すぎる「自分ルール」はトラウマに向き合って尚、私を邪魔してきます。それを打ち払うための自分の中での自信や勇気がまだまだ足りていない。これはもう、更に外の世界に触れたりしながら心を鍛えるしかないかなと。

加えて加齢や同じ場所にとどまり続けることによる価値観の固定化などからも自分ルールは日々生まれ続けています。でも以前に比べたら大分楽になった気がします。

一方で、トラウマや自分ルールに飲まれている間に、自分が実際現実的に考えて難しいルールの壁なんかにも遭遇します。自分ルールとトラウマの厄介なところは、現実に蓋をしてルールなのか現実なのかをあやふやにしまうところにもあるなぁ、なんて思います。


■自分を知るところから

 なんにせよ、やっぱり重要なのは「自分の仕組み」を知ることなのだなと思います。自分が何者なのか。どうしてそんなことを思うのか。自分とは何なのか。知って、使いこなして、磨いて、そうやっていつまでもトラウマや自分ルールで、自分を傷めつけて飼い殺す「自分(過去のトラウマや過去のルール)」を越えなければならないのだと思うのでした。

ちなみに今回この記事を書くにあたって、当時の自分の心境などを思い浮かべる上で非常に参考になったのが「永田カビ著:さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」です。興味のある方は是非。タイトルがアレなだけで、内容は9割が作者の永田カビさんが18歳から鬱と摂食障害により苦しみながら、自分を分析し、向き合い、心を開くって何だっけ、コミュニケーションて何だっけ、ということを紆余曲折しながら噛みしめていくような漫画です。

私は男ですが正直かなり共感できる部分が多く、途中何回か涙が溢れました。あぁ、自分の悩みはこうだったな、そうか、これは男女問わず普遍的なものだったんだな、と心が楽にもなりました。特に今回記事内で取り上げました「自分を飼う自分」という部分が非常に分かりやすく表現されてます。

また、タイトルで損してる漫画でもあり、まともな「レポ」の方を期待していた人たちからはブーイングを受けているようです。タイトル決めた出版社の責任なのに作者さんが攻撃されてるようなレビューを目にするのはなんとも心苦しい。

ともあれ非常にオススメなエッセイ漫画でございます。是非。
 
さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ
永田カビ
イースト・プレス
2016-06-30