NHKの朝のニュースで愛着障害が扱われていたようでした。4年前程から私は自分の愛着障害に向き合う機会があったのですが、その時はホントに知る人ぞ知る言葉であり、こうしてテレビ実際に発信された事は驚きでした。

愛着障害は子どもが抱える悩みでありながら親側も解決していかなければならない問題であり、そしてそれは大なり小なり様々な家庭で起きていることだと思います。なので今一度愛着障害について触れてみようと思いました。

尚、私が様々な本を読みながら落とし所をつけている文章なのを予め断っておきます。

■愛着障害って何なのかおさらい

人間の他者への愛着にはある程度スタイルあるようです。
・安定型:ある種、理想のタイプであり、親が子どもの心の安全基地として機能している状態。正常な成長をしている状態

・回避型:他者との親密な結びつきを避ける傾向にある状態。親からの関心が十分に得られなかった場合が多い。感情の吐露が苦手な一方で攻撃性をもった問題などを起こしやすい傾向にもある。

・抵抗/両価型:神経質で厳しく過干渉な親に育てられたり、親がかまってくれる時と無関心な時の落差が激しく、人間関係に強い不安を感じ感情の制御が不安定な状態。いじめの対象などになりやすい。

・混乱型:親が情緒不安定で予測不可能だったり、虐待を受けた場合の子の状態。回避と抵抗が入り混じった一貫性のない行動を示す。将来的に境界性パーソナリティ障害(簡単に言うと、重篤なコミュニケーション障害)になるリスクが高い。

愛着障害は、発達障害よりももっと人間の根幹の問題であり、ここに向き合わなければ人間の自立、自尊心の形成などを論じることが難しいものであるとされています。

愛着障害というのは、人間が本来「一人の個」を形成する要素が欠落し、結果として自己愛を主軸とした様々な行動に出てしまう事、そしてそのせいで他者との社会関係に著しい障害を及ぼし、社会生活が困難になってしまうこと、を言い表すものだと思います。

キーワードは「自己愛」「自尊心」「安全基地」


■具体例

自分の過去記事からの引用ですが。

・子どもの頃に親が子どもに過度な愛情を注ぎすぎ、子どもに依存した状態になる。それにより、子どもが親の期待を背負いすぎてしまい自己決断が出来なくなる。自尊心の著しい欠如が生み出される。誰かの判断や承認が無ければ生きていけなくなってしまう。

・子どもの頃に親が子どもを過度に束縛し、ルールやしきたりに縛り付けたり精神的、肉体的体罰を行うことで、子どもが自発性を一切失う。親に依存しなければ生きていけない閉じられた世界にしか目を向けられなくなる。家が安全基地でなくなるため、子どもは幼い頃から「死」を天秤にかけて生きることになり早期の段階で保守的な思考停止に陥ってしまう。他者との喧嘩も自分の問題ではなく、その後ろにある親の面子や会社員であれば、上司や会社の面子などに目が向かってしまう。

・親が常に不仲であり、常に子どもが仲裁者になってしまっている。そのため、子どもは早い時期から英雄思考が備わってしまい自分が悪い、と家族円満のための犠牲になることが習慣化してしまう。それ故、問題解決能力が「自分が死ぬほど苦労すれば・我慢すれば・死ねば」という方向に向かってしまう。

これもほんの一例。



■「安全基地」の喪失が鍵

 子どもは成長の過程で「自己愛」で自分を保ちながら、外へ踏み出すための「自尊心」を様々な形で養っていき、社会の中で自立した行動が出来るように成長していきます。

しかし自尊心を得るためには時に間違いを犯し、自尊心や、時に自己愛を傷つけられることがあります。その自己愛が傷つき過ぎないように守り、背中を押してくれるのが親の愛情であります。子どもの自尊心の成長を愛情でサポートするのが健全な家庭。

ところが、何らかの理由によりその愛情を受け取れない環境が続くと、子は自分で自己愛を守らないといけなくなります。すると、次第に守りの体制が強くなります。自分で未成熟な自分の心を守るしかなくなるためです。ある子はこれ以上傷つくまいと、失敗を極端に恐れたり、人とのつながりを恐れるようになります。ある子は、自分が壊れないよう感情を殺したり、物凄く従順になったりして指示待ちになります。ある子は、自分を傷つけたり、自分を無能だからこれ以上構わないでくれとアピールします。アピールすらしなくなったり。またある子は、感情の制御が不安定になり、突然怒ったり泣いたり、あるいは異常に他者に対して攻撃的になったり。

安全基地を見失い、自己愛が肥大化・自尊心が形成されないことで、人間としての自立が果たされないままに社会に送り出され、仕方なしに自分が出来上がっていってしまうわけです。


■調べるに至った経緯

 もうすっかり死語になっている気がしますが、過去にネットスラングとして一見真面目ながらも社会生活において人格的欠落から様々な不備を起こしている状態の人を皮肉って「真面目系クズ」という言葉が広まっておりました。ちょうどその時期に私がその状態に陥っていて大変人生の生きづらさを感じておりました。

どうにか自分のこの手詰まり感のある人生をなんとかしたいと思って、自分は一体どういう状態なんだろうかという事を調べたところ、この愛着障害というものに行き着きました。


■愛着障害は親から子へ継承されるもの

 この障害、子どもがまず被害者であることは前提なのですが、大人というのは存外身体が大きくなった子どもに過ぎないという見方もあります。その差は単に経験だけであると。

だから、大人になったから正しい親になれるわけでもなく。身体だけが大人になっているだけで、親自体も子供の頃に受けた愛着障害の傷を抱えたまま子どもを持ってしまう。

さて問題は、こうした親たちはかつて自分たちの親から受けた愛着障害と同じ事を子どもに対しても行ってしまう可能性が高いということ。それは親と子という関係についての道徳があまり発展していないという世間的な理由もありますし、親自体が自分の障害について自覚が無かったり、自覚はあるけど仕方ないと思っていたり。

親の子どもに対する行動や考え方は自分の過去の経験か繰り返されてしまうというのがやはりあるようです。

例えば虐待を受けた人がおとなになり親になった時、子どもにはあんなつらい思いをさせるまいと甘えさせたとします。ところが甘えさせたが故に自分の子供の頃には想像もつかないようなワガママを言ったり、あるいは幸せそうだけど「自分はこんなに楽しい過去は無かった」と、無意識のうちに子どもを通して自分の過去を重ねてしまう。頑張ってるはずが、自分の過去が否定されて、自分の心が知らず摩耗していき、そしてある日それが限界に来てしまい……など。

これらはつまり「自分が愛着障害」という負の連鎖を受けてきたのだという理解が無いままに、自分を押し殺してなんとかしようとするも、結局うまくいかない事例。それとか、例えば子供の頃親があまり家に居ない子は大人になっても「まぁそんなもんだ」と思って、いつの間にか自分の昔の寂しさや不安に蓋をして、やがて自分の子や…はたまた友達関係にだってそうした事柄を持ち込んでしまう。

ともかく、愛着障害というものの怖さは、何ら意識をしなければ自分の子や次代に対して知らず知らず継承されていってしまうということ。意識が向けられなければ「性格」とか「人間性」とか程度の問題で片付けられてしまうことにあります。そんな事がまかり通って良いわけがないのです。


■愛着障害を特性とする考え方も

 例えばバラク・オバマ氏は昔、非常に良い子であり従属的であったとか。複雑な家庭環境、黒人としての学校生活などなど。彼が密かにドラッグやアルコールに依存していた時期があることを知って一番驚いた一人は彼の担任だったとか。

その他にも例えば太宰治とか例えば夏目漱石とか。愛着障害の生きづらさをむしろ作家としての特性として活かしたような人もおります。

だから決して愛着障害が完全に害悪だという話でもないのだと思います。そうやって培われた人間性もまた個性。

愛着障害の問題というのは、愛着障害自体の問題ではなく社会の不理解や自身が自身のことに対して不理解であるという部分があると思います。


■心の医療は未だに未発達な分野とも言われてる

 根性だとか、性格だとか、甘えだとか、仕方ない仕方ない、と。テクノロジーがどれだけ発展しても、心の問題については未だに「昔からそういうもんだ」「自己責任」という事で片付けられてしまっているフシがあるように思います。鬱なども典型であると思います。

心の問題が自己責任で済まされるはずがないのです。心はそれぞれの人々がお互いに影響し合いながら育まれていくものであります。そこにずっと目隠しを続け、なんとなく性格だとか人間性だとか、で目隠ししていたのがこれまでの時代。

心に対する理解がこれからの社会はより一層求められると思いますし、愛着障害という人間が人間として形成される上での極めて重要な問題についてはより理解がこれからも深まっていけば、世の中少しは他人にもう少し理解を示す事が出来るようになっていくのではないかと勝手に思っていたりするのでした。


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■まとめ

 というわけで長々と書きましたが、要約すると「愛着障害っていうのは大人になっても抱えたまま生きている人は潜在的にそれなりに居て、結構社会問題だとは個人的に思っているので、子どもに対するケアも勿論大事だけど大人のケアがまず大事なんじゃないかな」と思うのでした。

じゃあケアって一体どうしたらいいのだという話になりますが、それは次回以降…長くなってしまったので本日は愛着障害は大人こそ向き合う必要がある、という部分と、実際どういうものなんだというのをまとめました。


関心ある方は是非こちらの本を。本記事の愛着障害のおさらいの項で特に参考にしております。


 


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