20141107
出典:いらすとや


 人それぞれに事情が違うと思いますが今回の件については家庭事情に絡んでくる問題でした。是非是非共有したいと思いましたので今回も例のごとくプライバシーを極力尊重した上で相談メールのやりとりを掲載致します。





■1通目の相談文

拝啓

まじクズ様 はじめまして。
ニコニコ大百科で「真面目系クズ」の記事を読み、まるで自分のようだと恐怖感を覚え、何とかしたいと思い探した結果、まじクズ様のサイトにたどり着きました。自分を変えたいと思い、メールさせていただきました。
自分の悩みは、宣言したことが実行できないことです。
例えば、毎日しっかり片づけをすると決めても、数日で実行できなくなってしまいます。
意識しようとしているのですが、どうしても忘れてしまいます。 些細なことでさえもできないので、自分はこんなこともできないのか、努力をしているはずなのに…。
ただ口先だけの人間じゃないか 人から信用されなくなってしまう・・・ など、卑屈になり、自分に自信が持てません。
こんな自分が大嫌いで、この機会に変わりたいと真剣に思っています。
どうしたら、宣言したことを継続して続けていくことができるでしょうか。
どうしたら前向きに、自信を持って人生を歩めるでしょうか。
自分は変われるでしょうか。
人生どん底の自分(新卒で契約社員で入社したのに1年で切られることが決定し再就職活動中)にアドバイスをお願いします。

敬具



■1通目の返信

ご連絡ありがとうございます。文章拝読致しました。
大丈夫です、結構簡単に変われるのでご安心下さい。

貴方が変われないのは、貴方をそのように構成する環境が整っているからに過ぎません。
決意というものは一番脆いものです。
毎日片付けを今までやらなかった人間が三日坊主になるのは当たり前のことなのです。
毎日片付けをしなくてもいい環境を構築していたのですから。
つまり、しなきゃいけない環境を作るのです。

学校のテストの最中に目の前の問題を解かない人間は殆ど居ませんよね。
テストの問題を解く以外のことをやっちゃいけない場なわけですから
当然皆学力の差はあれどテストを解くことに集中せざるを得ません。

私達は本当のところ「自分の強い決意」なんてもの何も持ってないのです。
あるのは「そうせざるを得ない環境」だけ。
私達が自分の決意でできることはその環境の構築だけです。

例として出た、掃除をしなきゃいけない環境作りはどうしたらいいでしょうね。
毎日のチェックリストを作りましょうか。
掃除を怠った事による具体的な健康被害の標語などを目に見える位置に貼りましょうか。
いっそのことスリッパの裏にクイックルを装着して掃除の意識も無く掃除できるようにしましょうか。
週末必ず友達や家族や恋人などを家に呼ぶようにしましょうか。
そもそも汚れないようにモノを極力置かないようにしましょうか。

本当に本当に必要にならなきゃ人間行動なんて伴わないのです。
だったらその必要になる環境を生み出してやるのです。私達はただの高機能な装置です。
環境の見直しの徹底が大事なのです。

貴方が自信が無いのも、自信が無くなる環境に足を引っ張られてるだけです。
自己啓発本を読んだり、貴方に自信を与えてくれる人と付き合ったりするのが良いです。
自信も習慣もホントに環境次第なんです。
決意は単なる着火作業で、あとは燃やし続けるための環境作りが大事なんです。

この記事でより詳しく書いてますので参考にしてみてください
http://majikuzu.doorblog.jp/archives/42203183.html

ご自身をあまり卑下しないでください。
それよりも、周囲の環境に目を向けてみてください。



■2通目の相談文

拝啓
まじクズ様

お忙しい中、お返事をいただきありがとうございました。
確かに自分の周りには親や家族といった自分を支えてくれる方々がおり、それに自分は甘えていたのかも知れません。
自分自身で改めて周りを見て、自分が継続できるような環境を構築していきたいと思います。
大変参考になるアドバイスをいただき、ありがとうございました。

最後にもう一つだけ、相談させてください。
自分はよく母や弟から自分の考え方や行いについてよく意見やアドバイスをされます。
でも自分はその意見を集中して聞くことや、アドバイスに真剣に向かい合うことができません。
自分を否定されているような、自分が 欠点ばかりの人間に感じて反発してしまうのです。
後でよく考えれば、言っていることは間違ってないし、言っていること自体大したことではない(片付けくらいちゃんとしたら?前向いて生きていけば?人の話はきちんと聞きなさいなど)のですが、どうしても人から指摘されると反発してしまうのです。
人の意見は自分が思っている以上に貴重で、自分を熟知している家族の意見ともなればなお貴重だと思うので、受け入れていきたいのです。
どうしたら反発することなく、受け入れることができるでしょうか。
たびたび申し訳ありませんが、ご意見を頂戴できれば、と思います。
よろしくお願いいたします。



■2通目の返信

そうですねぇ、人間てなかなか「言われて当たり前のこと」って耳をかせないんですよ。
人間誰だってどこかで「自分が正しい」とどこかで思って生きてるんですから。
他人にとってはアドバイスのつもりでも余計なおせっかいなんですね。
うっせーそんなことわかってるよ!そんなに私がダメだってこと証明して楽しいのか!って。

でもですね全員が全員反発してはいませんよね。
やっぱり言われたことちゃんとこなす人間も沢山いる。
じゃあやっぱり自分がおかしいのか?と、そういうことではないのです。
こうやって他人の言うことを聞けないっていうのは実は本質ではなんです。

貴方の状況をみていると2つの点が浮かびます。

まずひとつ。
何故反発してしまうかというと、それは自尊心が育ってないからなんですね。
自分に自信が無いから、少しでも自分の進む方向にケチがつくと身構えてしまう。
少しでも押されたら倒れるくらい不安定になっているから、私を倒すな!と牙むいてしまう。
だからこの問題はどうやったらアドバイスを聞けるようになるかではなくて
実はどうやったら自尊心を育めるだろうか、という観点からの問題になります。

自尊心は例えば身体を鍛えるとか、応援してくれる友達を作るとか
ちょっと募金してみるとか、クツを磨いてみるとか、
大きなことからではなく小さなことからコツコツと磨くものです。
それから自尊心を損なわせる関係の人間を排除することですね。
自己啓発系の本なども読み、心を鍛えることで自分余裕が生まれます。
こうすると少し位意見されてもどっしりと構えて聞くことができるようになっていくと思いますよ。



そして2つ目ですが。
ご家族が貴方にかけている言葉を振り返ると
実は貴方の自尊心を突き崩すような言葉をかけられてしまってるのですね

>片付けくらいちゃんとしたら?
>前向いて生きていけば?
>人の話はきちんと聞きなさい

これ、別に貴方は悪く無いですよ。
相手の言葉選びの方が悪いです。
こんなのますます自信崩されますよ。
だって、貴方は言葉の大事さが分かってるけど出来ないのに困ってるのに
それを敢えて指摘してるんですよね?

人間て一番身近な存在に対してほどぞんざいに扱ってしまうんです。
それはお互いに。

貴方の自信を奪っていることにご家族は自覚が無いのかもしれません。
意見としましては、ご家族にこの旨を伝えることが大切だと思います。

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私は母や弟の言うこと自体は正しいと思ってる。
でも、そんなに自信を崩すような言われ方をされ続けてはまともに聞けない。
みんなにとっては当たり前だと思ってることが出来ない悔しさを抱えながら私は一生懸命毎日悩んでいる。
別に二人のことを嫌いになんて思ってないし、言ってもらえるのはありがたいと思ってる。
ただ、言われて治らないから困ってる。
片付けが大事なことなんてわかってる。
前を向いて生きていくことが大切だなんてわかってる。
人の話をちゃんと聞く大切さだってわかってる。
全部わかってる。
努力して治せるならここまで苦しんでない。
私だって治したくなくて直してないわけじゃない。
でも、どうしてか出来なくて、そう言われる度に苦しくなる。
そうした言葉選びをされる度に私がこれだけの苦しい思いをすることを分かって欲しい。
指摘だけじゃなくて相談に乗ってほしい。
分かってはいても出来ない事があることもわかってほしい。
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もちろんこれは私の言葉なので貴方なりに考えてることは整理した方が良いと思います。
ただ、どうしてこんなことを伝えるかといいますと
ご家族が貴方がどれくらい悩んでいるか分かってない可能性があるんですね。
私達は表面上の事象を見つめて「貴方はこれがダメだ」とか平気で言ってしまうんですけど
ダメな部分を当人が
「やろうとしても出来ないのか」
「やったけどダメだったのか」
「面倒くさくてやってないのか」
「何かしら別の辛い思いがあって出来ないのか」

こういう情報って分からないんですよ。
親だから家族だからって察知なんて出来ないんですよ。
大体は親側が「お前のことはなんでもわかってるぞ」って開き直るんですけども。
わかってるわけないんですよ親子兄弟といえど他人の心なんて。

でも、伝えないと貴方はもしかしたら誤解されているだけになってしまう可能性があるのですよ。
そうなるとますます貴方に対する言葉は感情を逆撫でるような、辛辣なアドバイスになっていく可能性がある。
それは何より貴方にとって不幸になる。
大事なのは、分かってもらう必要はなくて、伝える事です。相談することです。

どうでしょう、最近どこまで根っこの部分まで家族に貴方の悩みを伝えましたでしょうか。
貴方の心の叫びをしっかりと家族にお伝えしてみてみると良いのではないかと感じました。


最後に、無理しなくていいですからね。
頑張り過ぎないで、適度に、いけそうだと思ったらやってみる。
世の中大体はタイミングと運ですから。
気楽に、気楽に構えていってみてください。


■最後のメール

拝啓
まじクズ様
お忙しい中、お返事をいただき、ありがとうございます。
まじクズ様のお言葉を聞いて、今思い返してみれば自分は親や兄弟に自分の思いや悩みを
心の底から伝えていなかったと思いました。
叱られたくない、嫌われたくないと考え、自分自身の想いに蓋をしてただ意見を聞いているだけでした。
自分の思いを伝えることが大切だ、ということを私は忘れていたのかもしれません。

自尊心に関しても、自分に自信を持てるようなことをやってこなかったように思います。
中学生時代に躓いてから、自分をほめることも、何かに本気になることも、コツコツ何かをすることもなかった
ような気がします。
自分のできることを、また日々できることを小さくてもいいのでコツコツやっていこうと思います。

このたびは貴重なアドバイスを授けてくださり、ありがとうございました。
自分では考えつかなかったご指摘に目からうろこが落ちました。
自分も変わっていけるんだ、と思え、とても前向きな気分になれました。
本当にありがとうございました!

敬具


■最後の返信

色々と大変でしょうが無理に全部をいきなり100点にしようとするのでなく
「昨日よりは今日を1点くらいマシにしてみよう」
そういうゆるりとした気持ちで余裕を持って頑張ってください。
頑張り過ぎると余裕が無くなって、うまくいかなかった時にヘコみます。
出来そうな時にやる。
焦らない。
でも頑張れそうならちょっと頑張ってみる。
自分の心や体調などと相談しながらじっくりと歩みを進めてみてください。
ダメそうなら休んだっていいんですから。
人生にも心にも身体にも波があるのです。

くれぐれもご無理はなさらないよう。
貴方の毎日が昨日よりも少しだけ良い方向 に向かいますようお祈りしております。





■まとめ

 「自分で言ったことが実行出来ない」「人に言われたことが出来ない」
似てるようで全く異質の問題だというのが紐解くことで見えてきたかなぁと思いました。ただこれはあくまで一例に過ぎないので、各々には各々にとっての事情があると思います。

今回の問題は、人間というシステムの運用を最適化するための環境整備に失敗していたという機能面のお話と、自身の能力と願望が一致していない状況を家族に相談出来ていないが故に双方に軋轢が発生してしまっていた、というお話でした。

心当たりございましたら是非是非ご参考にいただければと思います。

いやほんと。


夢をかなえるゾウ 文庫版
水野敬也
飛鳥新社
2011-05-20