20140807
出典:アオイホノオ(10) (ゲッサン少年サンデーコミックス)


 非常に迷います。前回あれだけ「凄い教訓になるし絶対オススメだよ!」と推しておきながら、10巻を読んだ時に、ちょっと迷ってしまった。

今回はネタバレを含みますので、楽しみに読んでいる人は避けた方が良いかもしれませんです。



■焔君の成長

真面目系クズの脳内を体現したような言い訳だらけだった焔君がついに、渾身の力作を仕上げていきます。
何をするにしても批評家で批評批評だらけだったあの焔君が、徐々に成長しているのです。手を動かしているのです。きっかけは漫画持ち込みに行ったSA社の担当の方からの連絡。

いつも批評家で自信だけはありながらも、完璧なものを作るまでは外に出さないべきだと自分を守り続けてきた焔君が、ついに!

ちなみにその模様は以前のブログで詳しく表記しております
 
アオイホノオが教えてくれる、大切なこと



■焔君が味わってきたこれまでの挫折

 焔君はこれまでも何度も挫折してきています。しかしそれは、焔君が「自分で何もしてない間に勝手に周囲の物事が進んでいた」という挫折。つまり、焔君は常に言い訳の余地のある挫折を繰り返してきていただけにすぎなかった。現に、これまでの挫折は全て言い訳や開き直りで乗り切ってきました。

しかし、焔君は本当の挫折をまだ経験していなかったのです。自分の小さな世界を守っていたことによって。



■ジョウという、焔君の鏡

 焔君が本気で漫画制作に取り組み始めてから、焔君のライバルのジョウの露出が少し増えてきます。私の勝手な読み取りとしては、焔君は担当者に向けた漫画を作り始めたことによって、ようやく批評家からクリエイターの卵としてのステージに入ったのだと受け取りました。

それはつまり、焔君が「批評される側」になったということ。そうしたとき、過去の焔君をまんま投影したようなジョウというのは非常にポジション的に(読者として)おいしい。

ちなみにジョウというのは映像学科でありながら漫画家を目指す批評家根性の座った、ある意味変化するまえの焔君と同じようなキャラ付け。

以降焔君はかつて自分が言ってきたであろう数々の批評家としての意見のしっぺ返しを主にジョウを通して受けることになっていきます。



■焔君が味わう、本当の挫折

 焔君はSA社に漫画を送りますが、その返答に一喜一憂します。ここは特に焔君にとっての挫折ではなく、むしろ担当さんとの次のステップに進んでいるような内容なのですが、そこの焔君とジョウの反応も見もの。

で、ようやく10巻の話なのですが、大学にて3分間の自主制作映像作品を作るという課題を与えられます。この課題は一年間の集大成のような課題で、焔君は漫画を書いていた勢いに乗って、映像作品も仕上げてしまいます!

入学当初の課題はスケジュールを見誤った挙句「俺は完璧なものしか出さん」と言って自己正当化していたあの焔君が!魂を込めて!心血を注いで!なんかもうオリジナル一直線で自分でも面白いのかどうかもわからないままに!

……

ついに始まった上映会。
爆笑が渦巻いたり、批評が飛び交う中。
ライバル視していた庵野ヒデアキの作品は案の定素晴らしい出来。圧倒的な実力にこれまで以上に焔君は焦燥します。やめてくれ、俺のが始まる前にそんなに盛り上がらないでくれ!と。

そして、いよいよ焔君の作品の番。

永遠とも思える3分。








焔君はクリエイターにとって最も辛い「無反応」という評価を受けるのでした。

直後に放送された、何の手間もかかっていないような料理番組のパクりで会場は大爆笑。



そこで、焔君はついに自分の守ってきた世界を初めて大勢の前で蹂躙されるのでした。
自分にあるかもしれない天才達と同じような可能性
自分が優れている批評家としての一面
いや…薄々気づいていた、平凡な自分の能力
ライバル達との圧倒的な力の差
圧倒的な自信 慢心

渾身の力で挑んだからこそ、希望や焦燥、そのありのまま全てを焔君はこれまでのようにひょうひょうとかわすことも出来ず、真正面から受け止めるしか無かったのでした。



「アニメなんかつくっちゃって…本当にごめんなさい!!!!」



焔君が、初めて本当の挫折を味わった瞬間でした。焔君の世界が、ガラガラと音を立てて崩れていくのでした。

それは、多くの学生もまた、同じく。





■ここから生まれ変わる

 燃え尽きた焔君は、ライバルのジョウに声をかけられます。ジョウの作品の出来は焔君的には、なんというかあまりにもあれで、ジョウもすっかり落ち込んでいると思っていたのですが。

なんと彼はその作品はまだ未完の大作のほんの序章にすぎないというのです。しかも焔君の作品を批評する始末。

誰もが見ていれば分かる通り、それは明らかに入学した当時の焔君の姿そのものでした。しかし、焔君はその自信満々のジョウに、負けた気持ちになっているのでした。

しかし、この挫折が焔君の中に新たな発見を生み出そうとしているのでした。

というような感じで10巻終了。



■私の挫折

 私もどちらかといえばデザイナーとしてクリエイティブな方面で思考を走らせる機会がございますが、例えばこの記事を書くにしても誰かに言われるわけでもなく自分で考えた価値観等を形にして発信しているわけでございます。

で、私にとっての反応の一つといえば、アクセス数です。
最初の一年なんてひどいもんです、1日に5人も訪れないような時だって何ヶ月も続いてました。自己満足で書いてるんだから、と言いながらも、それは言い訳にすぎず…。今は多少は訪れる人が増え、ぼちぼち反応貰えるようになってきて徐々にではありますが世界の隅っこでブログ書いてる人として存在していいのかなーとか思えるように。

ブログ書く前も何度かやろうやろうとして
「いやまだ準備ができてない」
「もっと文章がうまくなってから」
「もっと色んな人のを研究してから」
なんてやって、いざちょっと自信持ってフンフンと書いてたら、まぁ何の反応もありませんよ。当り前ですけどね。


それとは別に学生時代も仕事をしていても、自分がメインとして務めてきた「長く温めていた」とか「十分に時間をかけて自信あった」とかそういうものはことごとく、大変ありがたく恥ずかしい反応を受けました。

ああ消えたい、こんなもの作っちゃって本当にごめんなさい、と。
ブログも同じく。



■挫折から学ぶこと

 こんな苦しみばかりで何が得られるのかとえいえば、そんなに劇的に何かが変わるというものでもなく、ただ図太さや自分で自分を前に押し出す世間的に言うところの厚かましさは挫折の度に身についていってるなぁと思います。

会社で挫折しここ2年近く干されましたがそれも随分私の厚かましさを育ててくれたなーと感じる次第です。そしてこれこそが自分の小さな世界を守ろうと踏みとどまるのではなく、前へ前へと歩く力になっているなぁと。また、本来の自分に向きあうきっかけにもなっているなと。

しかし同時に挫折は、耐え難い苦痛ながらも通過しなければならないものだなと思う次第。特に自尊心溢れる人々こそ。



■クリエイターだから特別だという話ではない感じが良い所

 この焔君の挫折体験は何も焔君が特別なのではなく、言い換えれば焔君はこれまでずーっと避けてきた「自分がもしかしたら大勢に批判されるかもしれない」というリスクに初めて挑み、自分の世界ではなく、世間からの正式な評価を受けて挫折を味わったというお話で、それはどんなものにも当てはめ用はあるのですね。

だから、焔君のような傾向にある人は焔君に自分を重ねながら読んで、うわああああああ!となるのが良いと思います。
そうしていずれ気付くのです、リスクに踏み出さないことこそが人生に最もリスクを与えているのだ、と。



■おわりに

 アオイホノオは何か色々な糧を私に与えてくれますというか自分の人生のハイライト見せられてるみたいで本当にうわああああとなります。これ多分心が弱っている時に読んだらいけないタイプの漫画かもしれません。

もう凄くオススメなんですけど、ちょっと傷口に塩塗られるかもしれない。そんな漫画。

という、10巻までのお話でした。
ちなみに焔君の話と並行して、後にエヴァンゲリオン等を手がけたアニメ会社ガイナックスを立ち上げる初期メンバーの話も進行しています。これもまた非常に面白い。本人に取材したのかは分かりませんが岡田斗司夫さんなどは当時から変わってないんだなーと思わせるような台詞の数々。

いろんな側面から楽しめるアオイホノオ。
やっぱり超オススメ!

いやホント。