kurosawa
引用元:http://goo.gl/ll6DX5

 家庭不和、過剰な期待、過保護…その結果、発達障害や愛着障害、アダルトチルドレンとして、心に傷を、社会に溶け込めない生きづらさを感じながら、それを総合した真面目系クズという烙印に打ちひしがれ、それでも、どこかに自分の記号を当てはめて安心している。
 
そんな私達にこそ、必要な、人間としての尊厳、生き方、挟持が描かれた漫画。それが、最強伝説黒沢でありました。

 

■簡単な概要

 2002年6月。サッカーのW杯をテレビで観戦し、誰よりも大騒ぎしていた黒沢だが、その心の底で気づいていた。
他人が何をしようとも、自分自身の出来事による感動、喜びが、己の人生に欠けていることを…。
ただ黙々と働き、家庭もなく、友人もなく、目標もなく、ただ漫然と生きてきただけだと猛省する黒沢であったが…!?
(Amazonの内容紹介より抜粋)


というのが1話の内容でして、要するにこの漫画は才能もコネも人望も無い、中年男子「黒沢」の日常と、彼のちょっとした決心から始まる波乱の人生の物語です。全11巻。


■ダメ人間賛歌…なのだが

 とにかく黒沢はダメ!ダメ人間!もう目も当てられないほどに!バカだしスケベだし友達も居ないし。それでいて人望が欲しい!欲しいのに、素直に行動出来ない。自分の身に起こることを最低最悪に考え、被害妄想で他人を憎み、それでいて自分は超絶不器用ながらも他人に親切しようとするのだが、あまりの不器用さ加減に逆に更なる反感を買ったり。
 
もう、本当に見ていて悲しくなってくるほどに、ダメ人間。

しかし、黒沢はある事件(事件というほどのものでもない)をきっかけに、男として、人間として生きるために戦い始めます。ものすごく、弱腰に。しかし、本能のままに。ここから、徐々に黒沢の人生に少しづつ変化が起こります。それは読んでのお楽しみ。

さて、そんな日々を過ごす中、黒沢はある日ホームレス達と関わることになります。そこで、ホームレス達が近所の不良少年から度々嫌がらせを受けていることを知ります。黒沢がその少年たちに割り込んでしまったことから、ホームレス達は報復の襲撃を予告されてしまいます。

物語は佳境に入り、ついに黒沢率いるホームレス対、近所の不良少年達の抗争に。しかし、圧倒的多数の不良達の数を知っていたホームレス達は決闘の直前まで穏便にすまそう、やったって無駄だ、諦めよう、と黒沢に泣きつくのでした。


■最終巻、怒涛の名言の連続

黒沢率いる数名は、数で圧倒してくる不良たちに見事な頭脳戦で立ち向かいます。あとは残るホームレス達が一気になだれ込めば勝てる…!しかしホームレス達は足がすくみ、先行する黒沢達を援護出来ずに居ました。それは…


出来ない……!それが…!
彼らは怖いのだ……!
人を怒らせることが怖い……!
ともかく…怒らせさえしなければ…
これまでほどほどで済んできた…
それが彼らの知恵…!
骨の髄までしみこんだ…

処世術…!

結果……
不参加 傍観 放棄…!
離脱…!やってはいけない離脱……!


援護の無い黒沢達は孤軍奮闘しますが、ボコボコに叩きのめされます。それでもホームレスたちの居場所を守るために、戦います。その血まみれの姿を見て、ホームレスたちの心に浮かぶ言葉は…


損得だけで生きて何になる…?
ましてや安楽……
あるいは安全……
そんなものだけを追って…
生きて……何になる……?
そんなことはミジンコ……
ゴキブリだってやっている………!

違うっ……!
違うっ違うっ……!
そうじゃないっ…!

オレ達人間は……
人間ってのは…
それ以上の………!
何かだろう…!

それ以上の何か……
つまり…
人間を……
人間足らしめている………

心…!
感情がある…!

それは…
たぶん…
少しでいいから…
一歩でいいから…
ましな人間になろう…という気持ちだろう………!

オレが…
オレのヒーローであろう…………
という気持ちだろう………!
つまり…

挟持だろう………!

もし…
もしそれを……本当にすべて…
失ってしまったら…

本当の意味での…
敗者だろう……!


ついに奮い立つホームレスたち。彼らの姿を見て、自分に重ねるようにしながら黒沢はつぶやきます。


闘わなきゃ…………
この世に生まれてきたら…………

とてもかなわぬ…
かなわなかろう…と思っても…戦うんだ……!

尊厳のため……!
胸を張って生きるために………!

だから…
実は…勝った負けたは2番目…
その前に…
闘う事自体に…意味がある……!

つまり…
敗者にも意味がある………!

でも…
見失ってしまった…!
かしましいから…!
この世は……
勝った負けたでかしましい………!
まるで…
それしか…
興味がないかのよう……
でも…
勝つ事と同じくらい……
いや…
ひょっとすると………
それ以上に…大事なはずなんだ…!
勇者だったって事も…!

そして…
どちらにもいたはずだ……!
勇者は…!
勝者にも………

敗者にも………!

敬意を払うべきだ……!
勇者に…!
つまり…!
立派に生きた人たちに…!

仮に…
立身や栄達とは無縁………
そんな人生だったとしても…
立派…!
あるはずなんだ……そういう事……!
つまり…
今日…
みんなが仮に…負けた…としても…
なんら恥じる事は…


こうして、決心したホームレスはついに不良達を退けます。
そして、勝利の祝杯。
しかし、ホームレスの一人が、泣き出してしまいます。彼は言います。


オレ達はやれる…ってこった………!
そうさ…!
やれるんだ………!オレ達は…!
でも…
でも…だったら…
だとしたら…

あの「不可能」は何だったんだ…?

あの胸を覆っていた不安……
無力感……
あれは何だったっていうんだ………?

結局…
わしらは意味無く………
何の意味もなく…

自分を…
見限ってたって事じゃないのか…?

くそっ……!
たまるかっ……!
へこたれてっ…!
目覚めたっ…!
スタートだ…!
今日が…!
生かすんだ…!
今日を……!
オレ達の敵は……
暴走族でも…
役所でも………
お巡りでもなく……
 
ここ…!
ここに巣食う…
自分はこの程度…っていう…
思い込み…!

幻想だ……!

失望してしまったんだ………!
わしら…!
自分に…!
ダメッ…!
それが何より…
一番ダメッ……!
まったくダメッ……!

そして、物語はクライマックスへ。
最後は是非自分の目で確認してみてください。





■ホームレスと黒沢

 漫画を読めばわかると思いますが、このホームレス達というのは、作中で一歩前に踏み出さなかった場合の黒沢の末路なんですね。世間とはそういうのものだ、大人になるってそういうことだ、なぜいつまで夢なんて見てるんだ現実をみろ、と。そして、諦めて、何もしなくなる。それが大人というものなんだ、と。

しかし、黒沢は既にそんなのイヤだ、オレは生きてるんだ、と。シートン動物記を読んで、奮起しているわけです。俺達は動物じゃなく、人間なんだ、と。シートン動物記のくだりはギャグなんですけど、実に黒沢らしい答えの見つけ方といいますか。


■生き方はどこからでも学べる。

 私達は常に良い親と巡りあえるわけでもありません。良い教師に巡りあえるわけでもありません。そうした時に、文学や啓発書や自叙伝や映画や漫画が、人生の父に成り代わるときはいくらでもあります。

この最強伝説黒沢はある意味、モラトリアムで、社会から除外される私達のような人間に大きな生き方を与えてくれる父のような存在であると感じました


■まとめ

 とりあえず読んどけ!と思います。もうこの作品は、漫画であり文学であり人生哲学です。かたっ苦しい長い文章読むのがイヤであっても、とりあえず漫画なら読めるでしょう。

たかが漫画。されど漫画。
最強伝説黒沢には確かに、真面目系クズが今の世の中を生きるヒントが描かれていると思いました。


いやホント。


kindleだと1巻は100円以下ですし、以降も定価より安くなっていました。