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 恐ろしい。私は通勤中の車内で振るえる指で1ページめくり、もがき、また1ページめくり、心をえぐられた。何がといえば、真面目系クズにとってこれほどまでに恐ろしい労働未来図は無いのです。
ああ怖い、怖すぎる。しかしこの労働ビジョンはこれから必然の流れになるように思いました。未来の働き方について遅れをとっていつの間にか埋没しないためにも是非とも手にとってみるべき良書であると思います。

 

■新しい働き方、リモートワーク

 本著は「小さなチーム、大きな仕事」でおなじみに37シグナルズが新たに今月発刊したものです。前回は疲弊しきったIT業界を通した仕事のスタイルに一石を投じ、話題になった本でした。こちらもオススメです。

さて今回はそこからさらに一歩ステップアップした考え方「リモートワーク」について述べられておりました。リモートワークとは簡単に言うと、社員が好きな場所で仕事をするスタイル。ということ。本著ではこれからの時代はまさにこの「リモートワーク」こそが新たなスタンダートになるであろうという主張が、2005年から37シグナルズが実際に行ってきた経験をもとに表記されております。


■これがリモートワークだ!

・都心に大きなオフィスを構えるなんて時代遅れだ!維持費だってバカにならない!

・そもそも都心人を集めた理由は乱暴に言えば、少ない労力で就労者を見張ることが出来るからだ

・そんな旧来のオフィススタイルに縛られないで快適に働けば、従業員の満足度は上がる!

・リモートワークでもオフィスは必要だけど、出社するもしないも社員の自由!

・給料をどの国の人であっても働きに応じた額で提供する。地域差別を無くすことで離職率が減るぞ!

・監視なんて仕事能率が下がるだけ!より実績が重視されるぞ!

・コミュニケーションは掲示板やスカイプ等のツールがあればOK!でもたまに会う機会は持つよ!

・苦痛な通勤、上司の喝に怯える職場、そんな事を続けながらもあなたはまだ従来の働き方が正しいと言えるのか?

・通勤を毎日往復1時間していれば、年間で240時間だ。240時間あればプロジェクト一つ進められるんだ。交通費だって交通のための排気ガスだって発生を抑えられる。

・発言力が無い人間が報われなかった時代は終わりだ。逆に仕事もロクにできないくせに口だけが達者で食っていた人間はいよいよ埋没していくぞ! 騒がしいことは重要ではない、実績こそがこれからのワークスタイルにおける存在感だ!

・既にリモートワークのイノベーター達は続々と船出をしている。しかし、今ならまだアーリーアダプタとしての船は残っている。それともこの働き方がスタンダードなってから船に乗り込むのか?乗り遅れる寸前であわてて乗り込むのか?ぼーっと船を見送るのか?リモートワークの時代は着実にやってくる!


■様々な箇所に生じるデメリットに対する回答もされている

 奇しくもこの本の執筆終了間近の2013年2月に、yahooのCEOマリッサ・メイヤー氏がリモートワークを取りやめる発表を行い、そこからリモートワークについては熱い議論が繰り広げられるようになったとのこと。

リモートワーク否定派から発せられる「チームの一体感」や「社員との円滑なコミュニケーションがクリエイティブな仕事を生み出す」などといった、至極まともそうに見える意見に対しても本著では否定ではなく、全く別アプローチでの代替などが可能であることを証明している。


■真面目系クズな私が怯える理由

 今更ながらおさらいですが、真面目系クズは例えば仕事において100ある時間の90までを好きに使って、残りの10でそれなりの平均点を出す事に命をかけてるような手抜き野郎です。あ、いえ、やるときはやるんですよ、自分の好きな事とかは異常にやる。ゲームとか。大体の正常な人は、やりたくもないことでもちゃんとやってモノにするために努力しますよね。そういうの嫌いなんですよ。でも失望されたくないから一応真面目にやるモーションはとる。あークズですね。頭をかきむしりたくなる。

ナンキダイという漫画家さんが当ブログと同名タイトルの「まじめ系クズの日常」というWEB漫画を掲載されております。的確です。ひざから崩れ落ちる。話数が進むにつれて加速度的に面白くなります。 


話を戻しまして、夏休みの宿題を最終日の夜にまとめてやろうとする人間は、社会に出ても同じ働き方をします。従来のオフィスワークはそれでも総合的に見て、ちゃんと体裁を保てばOKだった。しかしリモートワークではそれが、許されなくなるのです。
何故ならリモートワークはオフィスでの無駄な時間を省く代わりに、仕事の能率化を図ることが目的です。となると、よりスピーディーに実績を上げ続ける人間の評価が可視化し、能力の判断をすることが可能になるわけです。

100の時間の使い方が可視化されるのです。ナマケモノ終了のお知らせです。本著でも実績の上げられない人間に対する厳しい指摘は出ています。可視化がモチベーションを生み出すとも書かれていますが、そんな常時見られてたら心労で死んでしまう。


■仕事人間もまたいらない

 一方でじゃあひたすら死ぬほど働ける奴が良いのかというと、そういうわけでもない。あくまで人間としての感性を持つことが重要であるとされております。ロボットが欲しいわけじゃない。ようするに真面目に真面目にやるだけではただのロボットと変わりないってことですね。



■顕著になる実績主義社会

 私は勿論肯定的に捉えています。勉強してきた人間が、口のうまい人間に踊らされて悔し涙を流さない世界に。形になった努力が報われる時代。子どもの頃からずっと夢見ていた正常な仕組みがリモートワーキングによってようやく実現にまた一歩歩みを進めることになる。そう、しっかりと努力している人間には。


■あんまり悲観することもない

 現在の働き方の多くは、実際問題「既存のルールを利用して努力するよりズルく賢く狡猾に頭を使っている人間」がはばかっている。そんなの見せ付けられたら努力なんてしたくもなくなる。しかし、口だけ人間よりもエンジニアが、努力する働き手が正統な価値を与えられる時代になりつつある。


■真面目系クズのこれからの働き方

 この働き方が将来的なスタンダードになるのであれば、実績に努力を惜しみまくるクズにとってはより辛い時代になるとも考えられます。私はそれで手が震えました(笑)でも持ち前の「いかに自分が楽をするため」の努力に磨きをかけていけば、結構すんなり生きていけそうだなーと思いました。少なくとも住む場所にこだわらず今の自分の「実績」により比重が置かれるようになれば、住む場所を低所得の超田舎で暮らせばいいだけですし。都会に住みながら必死に身の丈にあわせる必要も無くなる。なんて素晴らしい働き方!


■勘違いを誘発しないために

 リモートワーキングは、クラウドソーシングではありません。オフィスに社員を縛り付けない新しい会社経営という話です。


■おわりに

 前作の「小さなチーム~」の発売から数年後、日本の企業にもその理論が根付き始めているように感じます。であれば本著のワーキングスタイルも数年後には日本企業のスタンダードに取って代わる可能性もありますし、実際にそうした動きはイノベーターの中で既に始まっているように見えます。

旧来の働き方が染み付いた人々にとって、このスタイルは猛反発されると思います。特に保守層が強い日本においては。しかし同時に彼らも、もうこの働き方の限界に気付いているはずです。あとはもうきっかけ待ちの状態かもしれません。

真面目系クズのようなモラトリアムでハンパ者は一層、労働社会における需要はなくなるのかもしれません。怖い話です。しかし、これまで以上に労働における間口は拡大していくものと考えられます。「働きたい」と思えばいつだってどこだって働ける社会。逆に言えば事業を起こす事だってますます簡単になってきた。そんな未来図に私は胸の高まりを感じて止まないです。

いやほんと