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 恐らくビジネスマンにとって、これから社会に出る人間にとって最良の啓発本になるであろう「ゼロ~何もない小さな自分にイチを足していく~」の著者、堀江貴文氏が、収監前に執筆した本「君がオヤジになる前に」 

本書はビジネスマン達へ向けた、当時の後ろを振り返らない(と思われていた)堀江貴文氏が、様々な年代のケースワーカーに焦点を当て、「君」に対して強いメッセージを発している。それならばただの自己満足本なのだが、当人自身の、そして表紙を担当したカイジ・黒沢、などでおなじみの福本氏との対談を通じて堀江氏の人間としての迷いが描かれている。

本書は自己啓発本でありながら一人の男が愛に悩み、苦悩を吐露した自叙伝のような内容。
それ故に、押し付け感がぬぐわれるなんとも不思議な本です。

■抜粋した言葉

正論、正論すぎる故に受け手によっては刃にすら思える言葉達。それでも、一歩を踏み出すための言葉として、自分の脳を揺り動かすための道具として、これらの力を利用してやるのも良いのではないでしょうか。

・安定を求めるプロセスの中で人は不安定になるがそれが真理。その中で上手く生きるべき。 

・20代はぺーぺーなんかじゃない。最盛期だ。20代でなんでもいいから成功を積み重ねて自信を作ろう。君は上司の評価ではなく、今の自分にもっと危機感をもつべきだ。 

・若いときに失敗や苦労を買うよりも、ミスを繰り返さない思考力を育てる方が大事だ。 

・大勢の前で話すと緊張する?じゃあ何故君は渋谷駅や新宿駅で緊張しないんだ?君は人前で話すのことに緊張してるのではなく、人前で恥をかく事を恐れてるだけなんじゃないか?恥をかいたって死にはしないしいいじゃないか。あがり症はただの心配性だ 

・適切な言い方ではないかもしれないが、起業はスピーディーなバカほど成功するのだ。バカは頭が良くないから躊躇しない、というか躊躇という概念が無い。 

・知らない、面倒くさい、やり方を変えたくない。こういう人たちを、僕は「情報弱者」と呼ぶ。 

・どうして人は悪口が好きなんだろう。成功している人を妬むのだろう。もし他人より自分が劣っていると評価されたのなら、己の立ち位置を確認する絶好の機会だと思う方が、進歩的なのに。

・「大人になれ。後で良い思いをさせてやるから」という甘い誘惑で、オヤジ達は若者から「嫌」の感覚を奪っていく。これはとても危険な洗脳だと思う。

・安らぎは人の思考を止める。思考を止めれば成長しない。成長しなければ歳をとるのが早まる。そして着々とオヤジ化が進み、身体の衰えとリストラと死の恐怖に、ビクビク小さくなって怯えるのみだ。そんな生き方、僕は絶対したくない。

・仲間は一時の寂しさを紛らすかもしれないけど、壁を壊してはくれない。もし本気で、負のループを断ち切りたいのなら、まず自分の孤独と真剣に向き合うべきだ。

・人生を下がって、どん底のさらに下まで、下がり続けると何かが見える。突き抜けるのは、何も上だけではないのだ。壁を突破するのは、地面の下からでも可能なのだ。



■漫画家、福本伸行の価値観

著書の後半では、表紙を担当した福本伸行氏との対談が載っています。福本氏もまた波乱万丈な?人生を歩んできており、その経験から語られる言葉には大変重みがあるように感じました。


・福本:日本には、トップになる人材を育てようという発想がない。軍人みたいに従順な人を育てるのは、おそらく上手だけれど。今トップを獲っている企業家たちに、誰かから教わって成功したんですか?と聞いても、みんな絶対に「誰でもない」と答えると思う。

・福本:育つやつは勝手に育つけれど、そこからこぼれた人が、ただ命令を聞くだけの人生を送らされる国になりつつありますよね。
 堀江:戦前の軍隊の規律文化が、いまだに尊いものとされている。これは本気で薄気味悪いですよ。


・福本:来る仕事を断るのは、落ちている金を拾わないのと同じ事だと思う。若いうちは妙に気取っていて見逃していたけど、スイッチが入ってからは、10円でも落っこちていたら、がむしゃらに拾いに行きました。成功するのは、落ちてる金を躊躇なく拾える人間でしょう。


・福本:熱くない三流は、だいたい傷つくのを極端に怖がってる人ですよね。そういうのに限って、成功への渇望が強かったりする。おかしな話ですよ。無傷のまま、人は上に行けるわけがない。
 堀江:ナイーブ過ぎますよね。『モテキ』の主人公・藤本みたい。


■日本に生まれたという利点をどう生かすのか?

福本氏に言わせれば、日本で生まれた時点でサイコロでいうところの6の目が出て生まれたということ。それをもっと若い人は自覚した方が良い、と話しております。また、対談の中でも特に面白かったのは、福本氏が福祉大国フィンランドに訪れての感想。国家に丸ごと終身保障が約束された国や国民との触れ合いを通して、福本氏が感じた国民の思想の違和感とは?大変面白い感想でしたので、是非一読をオススメいたします。



■欠落している包容力・愛の感性

 仮出所後にナイナイアンサーに登場した堀江氏は、母との関係についてもらしている、それが号泣につながるのですが。。。詳しくはこちらから。http://majikuzu.doorblog.jp/archives/34860022.html

堀江氏はこの著書を出版後、収監されることになります。
本書では中盤から堀江氏30何歳になった堀江氏が、自分自身へと問いかけます。TAKUROがリーダーを勤め全国ツアーの後に高校生時代のように飲み会えるGLAYの4人を見て、あるいはトヨタの奥田碩元会長の「駄目な社員にも包容力を持った経営」を見て、使えないと思った仲間は切り捨てながら進んできた自分を見つめている。孤独だと思った事は無い。合理的な経営で成功してきた。

だけど、彼らの成功が理解できない。 

それは後半の福本氏との対談にも及びます。「使えない、何も能力を発揮していない仲間に分け前を与えるという発想がどうしても理解できない。バンドとかであれば、たとえばサザンは桑田さんの才能で食ってる。だけど、桑田さんはそれをひけらかしたりせず、仲間に与えてワイワイやってる。」。それに対し、福本氏は「多分堀江さんは金がベースになっているからその尺度が違うのだと思う。彼らは利益のために発足したのではなく、楽しいから発足したんだと思う。俺もその気持ちは分かる、原点がまず違う」のような対談が繰り広げられております。福本氏との会話を通しながら、もやついていたものを吐き出す堀江氏。


■本書を通して感じたこと

堀江貴文というストイックな思考を見る事で様々な固定概念としていた感覚を見つめなおせる。一方でいかにして彼が批判されてしまったのか、本人が気付いていない人間としての本質の吐露を見つめることで、さまざな反面教師として学べる点がありました。うん、多分私もゼロなどを通して堀江氏の事なにも知らないままにこの本を読んだら「ホリエモンは何て傲慢な人間なんだろう。でもこの傲慢さが必要なのだろうか…」なんて考えてしまう。愛を何らかの数値的価値として代替しようとしてもがく堀江氏。その、あまりに建て前無く本質しか語らない人間の強くもあり、欠落した愛に気付かずもがいている痛々しさを感じるような本書。

啓発本の装丁をしながらも一人の人間の成功と苦悩と葛藤が描かれる自叙伝でした。しかも生きてる人で無事出所してゼロからスタート切りなおしてる人間のお話と考えるととても面白いです。Kindle版が大変お安くなっているのでそちらをオススメします。


人の歴史通して自分を省みるというのは非常に意義あることだと思います。

いやほんと



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