まだ全体の3分の1くらいまでの進行なのですが、今年早速大当たりの本だと思いました。真面目系クズの研究や処方箋として、という意味合いの話です。犯罪者になる、というのは最終地点であり、この「反省」することが素晴らしい事である文化が多数の犯罪者予備軍を生み出しているという観点から、著者の岡本茂樹さんが実際に数々の受刑者と対話してきた体験談などを元に問題点・解決に向けた内容が書かれています。

 

■反省は何のために行われているのか

 私達の文化は悪い事をしたら、反省することが求められています。その態度に難があれば、例えば「チッ、うっせーなー反省してまーす」などと対応しようものなら袋叩きに遭ってしまいます。つまり、反省とは彼が態度を改め更生したという記号を得る事で、安心したいという周囲の思惑を簡略的に表現する方法になります。

■反省が目的になっている世の中

 反省することが問題なのではなく、反省しろ、反省して当たり前だ、反省文を書け、などと強要して彼が問題を起こした原因の方に目を向けないことが問題であると本書で語られています。

■問題を起こした人間の思考を根本的に勘違いしている

 問題を起こす=謝る・反省する。ではその謝罪相手は誰であるかといえば、被害者になるわけです。しかし当人に当たる人々の大多数は問題を起こしてしまった時に被害者に対する謝罪の気持ちなど浮かばないそうです。むしろこの被害者が存在しているせいで自分は反省させられるとさえ考えるようになる。当人達がまず反省する際に心の中に思い描くのは、親の顔や世間からの冷たい視線であって、被害者本人への贖罪の気持ちというのは随分後ろの方へ置いているそうです。

■それが異常ではないのだが…

 本書によると、そうした思考プロセスは何ら異常ではないそうです。自分に置き換えるとすれば、確かに自分が犯罪を犯さないのは、親を泣かせたくない手を煩わせるわけにはいかない、怒られたくない、社会的信用を失いたくない、などの気持ちが先行します。モノを盗んだからそのお店が困るだろう、と考えられればそもそも犯罪なんてしないわけですから。

■受け手が喜ぶ反省文は誰でも書ける

自分が学生で常日頃両親から勉強することを脅され、捨てられる恐怖に怯えながらついにストレスの限界に達し、真面目を演じることが疲れてしまい万引きしてしまったという体で書きます。

 私は○○商店にて、万引きを犯すという社会道徳的に大変愚かな行為を行ってしまいました。学校の皆様や普段から目をかけていただいている先生方、両親や、お店の方々、たくさんの皆様にご迷惑をおかけしてしまったこと、改めて考え、自分の行いに対して深く反省しております。全ては私の心の弱さ、自分への甘さが生み出したものであると自覚し、今後二度とこのような事が無いよう、より自分に厳しく生活を改めたいと思います。

さて、反省しているように見えるでしょうか。見えるかもしれません。上辺だけは。


■万引きは結果であり、万引きに至るには必ずプロセスがある

 しかし、報道や世論はそうしたプロセスを軽視し、まず反省ありきだったり、犯罪とは無縁の真面目そうな彼が何故…キレる若者、などと数字を稼げること、騒ぎ立てやすい文言ばかりを並べて本質を見出そうとしておりません。


■反省文は意味がなく、本人が謝りたい気持ちをただ書く

 反省文は以上の様に、世間が安心したいがためのただのツールであるので全く意味が無いと書かれ、同じ書くのであれば迷惑をかけてしまった人達に手紙を書くことが重要であると語られています。親や恩人など一人一人に書き連ねていく間に、自分は被害者に対してどうしてこんなひどいことをしてしまったのか、と自分自身が行ってしまった行為に向き合う事が出来るようになる。


■甘えを許さず、反省させる世論 その世論に洗脳される人達

 犯罪をする人間は自分に甘い、弱い人間、自制心の無い人間。犯罪者は罪を償い、反省して誠意を社会に示すべきだ。こうした世論がより犯罪者を生み出す傾向を強めていると書かれています。




■私達真面目系クズは反省のプロ

 ここからは私の現在の感想。私達真面目系クズは、真面目を演じられるということで反省の色を出すことも処世術として上手くなっているように思います。別に真面目系クズが犯罪者予備軍であるということではなく、この反省という無意味さのロジックに気付くことで周囲の環境に目を向ける力が備わるのではないかと思いました。

■親子関係・会社関係で反省が常駐化していないか?

 普段から反省を求めるような組織に所属していないでしょうか。反省することが当たり前であると洗脳されていないでしょうか。いつの間にか自分が悪者であると錯覚していないでしょうか(参照:本当にあなたは悪者なんですか?)反省を美として、無意識に誰かに反省を求めて、誰かを追い詰め犯罪者を生み出していないでしょうか。


本書は行き過ぎた規律社会が生み出した影を的確に捉えた良書であると思いますので、是非一読オススメいたします。全部読み終わったら改めて書評できればと思います。
 
 
 著者の岡本茂樹さんと収監されていた堀江貴文さんの対談もかなり面白かったのでオススメです。
 





価値観広げていかないと、真面目系クズはどんどん不利な立場に追いやられていくだけだと思い胸が痛みました。また、この本の価値観を手に入れる事により世の中の理不尽さに苦しむ人々が自分を追い詰めているものの本質に気付き、そこから脱却していけるのではないかとも感じました。改めてオススメします。

いや、ホント。